Anniversary
part1が11/13でそこから一年。誕生日は別日なのでこうなりました。一足早いですがおめでとうメルニキ。・時期不明
・場所不明
・ショートショート
・規制かかる時間ギリギリに投稿するつもりだったのに⋯⋯
とある島、ケーキ屋の隣にあるその建物は大抵閉まっていて新しく来た住民は空き店舗かと思うが年に数回大柄で強面の男が出入りすことでどうやら違う事、看板の“TAILOR C”という文字でかろうじて仕立て屋だと認識されているその店はその日は珍しくオーナーがいるようで朝から騒がしい。
というのも、早朝からひっきりなしに配達物が届いているからだった。
配達人が来る度に看板に描かれたのとそっくりな駱駝が出迎えてきては器用にサインをしていく。
それを見て昔からの島民は
「もうそんな季節か」
時の速さを感じるのだ。
「ありがとうショコラ」
全ての配達物を広げて手伝ってくれた相棒の駱駝の頭を優しく撫でるとお気に入りの大きなクッションに座り開けていく。
客からの手紙には短く、あるいは長々と綴られた祝の言葉と地元の甘いお菓子が──店にいないことも多い店長に配慮してどれも日持ちする物ばかりだ──入っていた。一度打ち合わせをすれば客に出した茶菓子を自分が先に平らげるので好物は周知の事実なのだ。
一つ一つ開けては口角をほんの僅かに上げているキャメルは傍に弟がいない事を考えると珍しいことだろう届けられたお菓子を食べる順番を開けては決めていくので無駄に時間がかかっている。
一番大きな木箱を見れば百獣海賊団名義だが実際は大看板の一人からワノ国の様々な和菓子が詰められているし、色鮮やかな小包は革命軍に所属する優しい暴君からだ。
そんな荷物と手紙の山からキャメルは差出人の書かれていない小さな封筒を見つけると今までと明らかに違う笑顔を浮かべた。
殊更丁寧に開けるとキャメルがいつも舐めている飴が1つ転がり出てくる。他には何も入っていないがそれだけで送り主が誰だか分かるのか嬉しそうにペンをとり返事を書き出す。封筒と飴玉だけでこれならメッセージを書いたらどうなってしまうのかと不安になる長さだ。しかも会った時に渡すので
「手紙いらねェだろ」
と呆れたように言われたことがある。
「その時の気持ちを伝えたいんだよ。会う前に死んだらショコラが代わりに渡せるしね」
そう答えてからは、毎年無言で受け取るようになったが。
書き終わると便箋3枚を封筒に入れて立ち上がる。
一番最初に食べる物は毎年変わらない。
ショコラは既にお茶の準備を済ませてキャメルを待っている。
「ショコラ、おやつの時間にしよう!」